チャンスを逃すポンチョ(創作小話です)

チャンスを逃すポンチョ

確信に変わった

ポンチョは急いでナチョス教会に向かう

「くそっ!僕は何てバカなんだ。チャンスはそう何度も来ないって分かってたじゃないか!釣りのように!」

確信を現実にするためにアレサンドロ神父に会わなくては

午前中のことだった

川釣りをしていたポンチョは 視界の端に人の影を捉え ふと振り向くと

そこには美しい女の子が立っていた

美しいからなのか身体から光を発していた
比喩的な意味ではない

本当に光っているのだ

真っ黒なセミロングの髪は艶々しており 目には強い意志が見てとれる

頬は血色が良いのか少し赤らめて さくらんぼを滲ませたようだ

背丈はポンチョと同じくらいでスラッとしている

背だけではなく鼻も高めであるが主張はそんなに強くない

見たことがない女の子だった

ポンチョが釣りしに来る川は 人気がなく いつも静かなので

まさか綺麗な女性がこんなへんぴなとこに来るとは思っていなかった

というかどこからやってきたのだろうか?

驚きを隠せないポンチョは ただ呆然と美しい女の子を見ていた

女の子は見られていることに気付いていないのか じっと川を見つめている

そんな彼女にポンチョは声をかけようか迷うが 神々しい雰囲気と威厳を纏っているので躊躇してしまう

その時

竿に力強い反応があり 慌てて握り直す

かなり大きい

釣糸を強く引っ張る黒い影が見えるけど 魚とは思えない大きさだ

何よりかなり重い

普通に釣り上げるのは難しそうだから 体力を消耗させ 少しずつ岸に引き寄せようと試みる

すると釣糸の先の方から声が聞こえてくる

「っっ・・たい・・・ったい」

不思議に思ったポンチョは首をかしげながらも 釣糸が切れないように上手く誘導する

徐々に体力を失った大きな物体は抵抗が弱まると 岸に引き寄せられた
そして静かに姿を現した

スキンヘッドのおっさんだった

「いたいよーいたいよー」

おっさんは泣いていた

ポンチョは長い格闘で息をきらしていたが 震えていた

何故おっさん?
そう思いながらおっさんの口に刺さった釣り針を取ってやる

おっさんも震えながら息を切らしていたが落ち着いてきたらポンチョの方に向き直り怒鳴る

「おい!ごらあぁぁぁぁぁぁっ!何しとんじゃあぁぁぁぁぁぁぁ」

あたりは静寂に包まれていた

おっさんはもう一度叫ぶ

「おい!貴様あぁぁぁぁぁぁぁっ!餌がショボすぎるんじゃあぁぁぁぁぁぁっ!それに対して釣り針はしっかりし過ぎだろおぉがあぁぁぁぁぁっ」

川のせせらぎと鳥の囀りが聞こえる

「おい!聞いてんのかあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「あ、すみません!聞いてました。しかしなんで川の中にいたんですか?」

「泳ぎたい時くらいあるだろうが!そして腹が減っていた!目の前に小魚がある!食べる!釣り針が唇に刺さる!痛い!そういうことじゃあぁぁぁぁぁぁっ」

スキンヘッドのおっさんは全裸だった

「全く。初めてだよ!目上の者を釣ろうとするとは無礼なやつだ!」

スキンヘッドのおっさんは全裸だった

「おい!名を名乗りなさい!おじさんを釣ろうとした君の名を名乗りなさい!」

やっぱりスキンヘッドのおっさんは全裸だった

「ポンチョといいます。決しておじさんを釣ろうなんて思っていませんでした!すみませんでした!」

「ふん、変な名だな。まぁ口では何とでも言えるからな。謝って済むなら警察いらないだよおぉ!」

まごうことなき全裸のおっさんにそう吐き捨てられた

「とまぁ冗談はこれくらいにしておいてやろう。時にポンチョとやら。ワシを呼び出して何のようだ?」

全裸のおっさんは仁王立ちで私の前に立ちはだかる

「いや、呼んでませんが」

「すまない、言い方が悪かったようだ。ワシを召喚したがどういった目的なのか知りたいのだが」

「召喚?目的?私はそんなことしていません。たまたま貴方が釣れただけです」

全裸のおっさんは溜め息をついて首を振った

「あれは演出だ」

「演出?」

「そうだ。ただ現れるのもつまらないだろう?だから釣られたふりをして登場したのさ」

「いつも全裸なんですか?」

「これも演出だ」

「演出に力入ってますね」

「プロだからな」

自嘲気味に笑う全裸のおっさんはいつの間にかタバコを吸っていた

「しかしお前さんがワシを呼んだのは間違いない。貴様は叶えたいことがあるんじゃないのか?」

「叶えたいこと?」

不敵に笑う全裸のおっさんを訝しげに見やり 質問に対して考える

「ちょっと何言ってるかわかりませんね」

「ほぅ、中々の態度だ。よしそれなら宜しい。ワシは帰るからな」

そう言うと全裸のおっさんは川に引き返す

不思議に思ったポンチョは後ろ姿のおっさんに問いかける

「あの、貴方は何者なんですか?そして、叶えたいことがあるのとどういう関係があるんですか?」

「ワシの名はラファエルだ。叶えて欲しいものがある子羊の前に現れる。そして叶えるために力を貸すという使命がある。しかし、今回はワシの勘違いだったみたいだ」

「ラファエル・・もしかして貴方は・・」

「ではこれにて失敬する。アディオス!」

ポンチョが言う前にラファエルと名乗る全裸のおっさんは透明になっていき消えた

またいつもの景色に戻ったが一つ忘れていたことに気付く

さっきまでいた美しい女の子がいない

いつからだろう?

勇気を出してさっさと声をかければよかったと思った

ポンチョにとって理想通りの女性だったからだ

その時心中の扉が開く音がした

「さっき全裸のおじさんが言ってた、叶えたいことって・・・・・。っ!もしかして!」

ポンチョは言うやいなや釣り道具を川岸に置いたまま 村に向かって走り出す

「なんてことだ!僕はとんでもないチャンスを逃がしてしまったんだ!」

そう言って唇を噛む

「大天使ラファエル様の事を知っているのはアレサンドロ神父様だ。急がなきゃ!」

ポンチョは逃したチャンスを再び掴みとることはできるのだろうか

逃した魚は見た目の通りとても大きいということが分かったのであった

はい。

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